坂本工務店:コラムSakamoto Column

    
家づくりノウハウ
    

2026.08.21

シロアリ対策は何を選ぶべき?|防蟻処理の種類とホウ酸処理という選択肢<後編>

私たち坂本工務店は、広島県福山市を中心に家づくりを行っている地域密着の建築会社です。日々、お客様と向き合う中で感じたことや、よくいただくご相談をもとに、家づくりに役立つ情報をお届けしています。

前編では、耐震等級3や許容応力度計算によって高い耐震性能を備えた住宅でも、シロアリ被害によって本来の性能を十分に発揮できなくなる可能性があることをお伝えしました。
後編では、建築基準法や長期優良住宅の基準、住宅をシロアリから守るために欠かせない「防蟻処理」について詳しく解説します。


長期優良住宅でも防蟻対策は欠かせない
前編でもお伝えしたように、シロアリ被害は建物の耐震性能や資産価値を大きく左右します。では、住宅を長持ちさせるためには、どのような対策が必要なのでしょうか。
建築基準法では、地盤から1m以内の構造材について防腐・防蟻処理を行うことが定められています。ただし、防腐・防蟻処理をどのような方法で行うかまでは、細かく規定されているわけではありません。
そこで重要になるのが、長期優良住宅の認定基準です。


長期優良住宅では「劣化対策等級3」が求められる
長期優良住宅の認定制度では、劣化対策等級3という基準が設けられています。
劣化対策等級3は、住宅が3世代にわたって使用できることを想定した基準で、構造躯体が限界に達するまで75〜90年程度維持できることを目標としています。
そのため、防腐・防蟻対策についても一定の基準が定められています。

例えば、
 ・通気工法ではない外壁構造
 ・外張り断熱工法など通気層が十分に確保されていない構造
 ・土台にヒノキやヒバなどの高耐久樹種の集成材を使用しない場合
には、K3相当以上の防腐・防蟻措置が必要とされています。

ここでいうK3とは、木材へ薬剤をどれだけ浸透させるかを示す加圧注入材の基準です。
K1からK5までの区分があり、数字が大きいほど防腐・防蟻性能も高くなります。
K3相当の場合、薬剤の有効期間は約20〜25年とされています。

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加圧注入材にも有効期限がある
加圧注入材は工場で木材へ薬剤を浸透させる方法です。
木材に細かな傷を付け、高い圧力で薬剤を内部まで浸透させるため、高い防腐・防蟻性能が期待できます。
しかし、「一度施工すれば永久に安心」というわけではありません。
K3相当の加圧注入材でも、薬剤の有効期間は20〜25年程度とされています。

一方、通気工法などで現場塗布する薬剤は、日本しろあり対策協会や日本木材保存協会が指定する薬剤を使用しますが、有効期間は約5年が目安です。
環境への配慮から、それ以上長期間効果が続くような強い薬剤は使用されていません。
つまり、どちらの工法を採用したとしても、有効期限を迎えた後は再処理が必要になります。


完成後の再処理には限界がある
では、薬剤の効果が切れたら再処理すれば良いのでしょうか。
実はそこにも課題があります。
建物が完成すると、防蟻処理は床下から施工することになります。
しかし施工できるのは、目で見える範囲だけです。
壁の中や柱の裏側など、建築時には施工できていた部分でも、完成後は薬剤を塗ることができません。
つまり新築時には処理できていた部分でも、完成後は再施工できない場所が多く存在するということです。

また、近年増えている基礎断熱工法は、基礎の内側へ断熱材を施工するため、シロアリの温床になりやすいともいわれています。
そのため、適切な防蟻処理を行うことがより重要になります。


高耐久樹種だけではシロアリ対策にならない
「ヒノキやヒバを使えばシロアリに強いのでは?」
そう思われる方も少なくありません。
確かに、高耐久樹種は一般的な木材より耐久性に優れています。

しかし、シロアリは
 ・コンクリート
 ・プラスチック
 ・皮革
 ・繊維
などにも被害を与えるほど非常に加害力の強い昆虫です。

ヒノキやヒバであっても被害を受けることがあり、木材の種類だけに頼ることはできません。住宅全体で防蟻対策を考えることが重要です。


海外ではシロアリ対策が義務化されている地域もある
シロアリ被害は日本だけの問題ではありません。
特にアメリカ・ハワイでは年間数億ドル規模の経済損失があるとされ、住宅を売買する際には建物全体をテントで覆い、燻蒸処理を行うことが求められるケースがあります。

さらに、
 ・土壌処理
 ・薬剤注入材の使用
が推奨、あるいは義務化されている地域もあります。

オーストラリア北部やブラジルなど、湿度の高い地域でも深刻な被害が報告されています。
日本も気候変動によって高温多湿化が進み、今後さらにシロアリ被害が増える可能性があります。

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注目されている「ホウ酸処理」という選択肢
こうした中で近年、環境に配慮した防蟻処理として採用する住宅会社が増えているのがホウ酸処理です。
ホウ酸は温泉にも多く含まれる天然由来の鉱物で、殺菌剤や殺虫剤、医薬品、難燃剤などの原料としても利用されており、住宅の防腐・防蟻処理には「八ホウ酸二ナトリウム四水和物」というホウ酸塩が用いられます。

シロアリはホウ酸を一定量以上摂取するとエネルギー代謝が停止し死滅します。また、木材を腐らせる腐朽菌に対しても同様の効果を発揮するため、防腐性能も兼ね備えています。
さらに、ホウ酸を摂取したシロアリはすぐには死なず巣へ戻るため、その死骸や排泄物を仲間が取り込むことで巣全体への効果も期待されています。

人や哺乳類の場合体内に取り込まれても腎臓の働きによって体外へ排出されるため、安全性は食塩と同程度と考えられています。
また、揮発しないためシックハウス症候群の原因になりにくく、床下換気システムや全館空調を採用した住宅でも空気を汚さないことも特徴です。

現在では、長期優良住宅や劣化対策等級3でも使用可能な認定を受けており、防蟻対策の選択肢として採用する住宅会社も増えています。
また、一度木材へ浸透すると、水に流されない限り長期間効果が持続することから、完成後には再施工が難しい柱や壁の内部も長く保護できます。

このような特徴が評価され、近年では熊本城や二条城といった重要文化財の防腐・防蟻処理にも採用されています。


ホウ酸処理は施工品質が重要
ホウ酸には多くのメリットがありますが、その性能を十分に発揮するためには、材料だけでなく施工品質も重要になります。

ホウ酸は木材へ浸透しやすい反面、水に溶けやすい性質があり雨に濡れると流れ落ちてしまう可能性があるため、建築中はシートや仮屋根による「雨水養生」を行い、木材を雨から守りながら施工する必要があります。万が一流れてしまった場合には再処理が必要です。

また、施工方法は噴霧器による吹き付けや刷毛塗りが一般的ですが、認定された性能を発揮するには、必要な場所へ必要な量を正確に施工しなければなりません。
特に土台の仕口や継手などは塗り残しが起こりやすいため、認定施工士による施工や現場監督による品質管理が重要になります。


ホウ酸処理の注意点
先ほどご紹介したように、ホウ酸は水に溶けやすい性質があることから、土壌へ散布する防蟻剤としては適していません。 そのため、防蟻計画では木材処理と土壌処理を適切に使い分けることが大切です。

また、防蟻薬剤には、シロアリが薬剤に触れただけで駆除できることや、蟻道の構築を阻害する性能が求められる場合があります。一方で、ホウ酸は木材を食べることで効果を発揮する薬剤であり、こうした点は一般的な防蟻薬剤との違いとして理解しておく必要があります。
さらに従来のホウ酸は、乾燥した木材の内部まで浸透しにくいという課題もありました。
しかし近年では、この課題を改善するため、乾燥した木材にも浸透しやすい特殊なホウ酸製剤が登場しています。従来より木材内部まで浸透しやすくなったことで、防腐・防蟻効果をより安定して発揮できるよう工夫されています。

このように、ホウ酸処理にも特徴や施工上の注意点はありますが、製品や施工方法は年々進歩しています。大切なのは、それぞれの特徴を理解したうえで、適切な材料と施工方法を選ぶことです。

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まとめ
防蟻処理は、耐震性能や断熱性能と同じように、住宅の寿命を左右する重要な要素です。
建築基準法や長期優良住宅でも防蟻対策は重視されていますが、一般的な防蟻薬剤には有効期限があり、完成後には再施工できない場所も多く存在します。
そのため、新築時だからこそ施工できる部分までしっかりと防蟻処理を行い、将来を見据えた対策を選ぶことが大切です。

ホウ酸処理は、その選択肢の一つとして近年注目されています。ただし、材料そのものだけでなく、施工品質や現場管理によって性能は大きく左右されます。
家づくりでは、「どんな薬剤を使っているか」だけではなく、「どのように施工し、品質を管理しているか」まで確認することが、住まいを長く守ることにつながるでしょう。

こちらの内容はYouTubeでもご紹介しています。
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